衣文化と女性性
岡野吉右衛門『アイヌの衣文化』では、アイヌの人々の衣文化が女性性と深く結び付けられていることが指摘されていて興味深い。といっても、岡野自身がそう言ってるわけではなく、おそらく無意識に衣文化と女性が結びついている前提があるのだと思う。
それが実際にそうなのか、和人の文化をベースに考えた結果なのかはわからない。例えば次のようなくだり。(p.199〜)
アイヌの人々の文化の中では、針仕事は婦人の大切な役目である。針仕事は、織物や炊事と同じく、それができることは女性の誇りなのだという。みんな12,3歳から練習をする。
また婚約時には、女性は機道具や小刀などを結納として受け取り、そのお返しとして夫になる男性の着物を縫って届けた。
少なくとも岡野をはじめ、その前提となる文献の中では、アイヌの女性たちのライフサイクルは裁縫という行為によって多く規定されていたということだ。特に結納に関する記述から考えると、針仕事の技能は女性が有する大事な資産のようなものにも感じられる。こうした文化を持つ地域はおそらく他にもあると思う。
岡野の淡々としたテクストからは、それが「単なる事実」であるかのようにも読めるし、すでに和人の女性たちが失ってしまったもの―少なくともこれが書かれた1976年当時に―への憧憬なのかもしれないと感じたりもする。
さてどうだろう・・・。
- 作者: 岡村吉右衛門
- 出版社/メーカー: 衣生活研究会
- 発売日: 1979/01
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