糸・布・針を読む

自分は縫わないけど、縫ったり織ったりすることを考える・・・読書や調査の記録(基本は自分の勉強メモ)

2013-01-01から1年間の記事一覧

「女性とデザイン」

1881年、美術理論家のルイス・F・デイは次のように述べている。 「現代の差し迫った問題の一つは、貧しい女性はどのように生計を立てるのかということである。(中略)美術関係の仕事、特に装飾芸術は彼女たちに開かれていると多くの人々は思っている。」 ノ…

「その裁縫の針は奴隷主たちの良心をちくりと突き刺すだろう」

すっかりこのブログからご無沙汰していたのは、私の仕事の仕方が集中的に読書をする時期とフィールドに出る時期があって、ここしばらく読書する余裕がなかったため。久々にこちらを更新。 さて、タイトルにある「その裁縫の針は奴隷主たちの良心をちくりと突…

ワークショップ「アプリケに挑戦」

6月30日(日)に一宮市立三岸節子記念美術館で開催されたワークショップを拝見しました。定員20名ということで、すでに満員御礼だったのですが、ちょうど欠席された方がいらして、急遽参加させていただけることに。 現在開催中の「宮脇綾子展」のことは先日…

Tシャツの歴史を考えようとしたのだが・・・

知り合いから「日本におけるTシャツの歴史を知る方法」についてたずねられた。私にこんなことを尋ねても何も出てこないわけで・・・。 で、ネットでざっくり検索してみると、次のような流れがあるという。(あくまでTシャツ屋さんによる記事) http://www.ts…

「宮脇綾子 アプリケにつづる愛」

愛知県一宮市立三岸節子記念美術館で開催中の「宮脇綾子 アプリケにつづる愛」展。 まだ拝見していないのですが、図録の論文を書かせていただいていて、会期中に呼んでいただけることになっています。まだ準備中なのですが・・・。 私は宮脇綾子という女性は…

テキスタイルアート・ミニアチュール3 百花百枠

しばらくブログをさぼっていたけれど、復活。 この週末に伊丹市立工芸センターで開催中の「テキスタイルアート・ミニアチュール」展を見に行ってきました。 ミニアチュールという言葉通り、20×20×20(センチ)という小さな枠の中に、ぎゅっと凝縮されたテキ…

大正から昭和戦前の洋裁教育者たち ①

のちの洋装界の指導者となる人達は、大正から昭和戦前に名前が登場するようになる。 洋裁の時代―日本人の衣服革命 (百の知恵双書)作者: 小泉和子出版社/メーカー: OM出版発売日: 2004/03メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (3件) …

大正から昭和前期の洋裁教育

小泉和子『洋裁の時代』の「大正から昭和前期の洋裁教育」の項では、洋裁が身近になっていく社会の変化が紹介されている。この時代を戦後、洋裁学校ブームが起こる前史であるとしている。 (pp.24-25) 洋裁の時代―日本人の衣服革命 (百の知恵双書)作者: 小…

明治の洋裁教育―ミシン会社

洋裁の時代―日本人の衣服革命 (百の知恵双書)作者: 小泉和子出版社/メーカー: OM出版発売日: 2004/03メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (3件) を見る 日本の洋裁文化の定着に不可欠だったのがミシンの普及だった。というのは、一…

明治の洋裁教育―女学校

洋裁の時代―日本人の衣服革命 (百の知恵双書)作者: 小泉和子出版社/メーカー: OM出版発売日: 2004/03メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (3件) を見る 小泉氏の論に従って、初期の外国人女性主導の洋裁教育から、その後の男性専門…

明治の洋裁教育―20年代以降

洋裁の時代―日本人の衣服革命 (百の知恵双書)作者: 小泉和子出版社/メーカー: OM出版発売日: 2004/03メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (3件) を見る 明治20年代になると・・・(p.23) 日本の洋裁教育では日本人の洋裁教授者が…

ヘボン塾での洋裁教育(再検討)

小泉和子『洋裁の時代』では、「1870(明治3)年 「横浜ヘボン施療所」でキダー女史が洋裁を初めて教えた」とされている。 洋裁の時代―日本人の衣服革命 (百の知恵双書)作者: 小泉和子出版社/メーカー: OM出版発売日: 2004/03メディア: 単行本購入: 1人 クリ…

明治の洋裁教育―外国人による

いろいろと忘れていることも多いので、ここらで小泉和子『洋裁の時代―日本人の衣服革命』でも読み直しておくかな・・・。 洋裁の時代―日本人の衣服革命 (百の知恵双書)作者: 小泉和子出版社/メーカー: OM出版発売日: 2004/03メディア: 単行本購入: 1人 クリ…

棚機神社

裁縫や機織は人が暮らす上で不可欠な労働だったから、当然ながらそうした行為を守る神様というのがいる。そんな機織の神様を祀る、奈良県葛城市にある棚機神社を訪れた。 「この地域は、朝廷に献上する布を織る氏族が暮らす村で、五世紀頃、大陸から来た人が…

生命の布「ボド」―「座産」

田中忠三郎『物には心がある。 消えゆく生活道具と作り手の思いに魅せられた人生』(アミューズ エデュテインメント、2009年)より。(pp.166-169) 青森では、麻布や木綿布を継ぎ足した小布を「ボド」「ボドコ」と呼び、擦り切れて弱くなった所に継ぎ足す小…

田中忠三郎の母の刺し子

田中忠三郎の『物には心がある。 消えゆく生活道具と作り手の思いに魅せられた人生』(アミューズ エデュテインメント、2009年)から。 田中の母の刺し子についての文章「布を切るのは肉を切るのと同じこと」はとても重い。(pp.162-165) 「私の手元には今…

「下北にアイヌの人々が暮らしていた裏付け」

田中忠三郎の『物には心がある。 消えゆく生活道具と作り手の思いに魅せられた人生』(アミューズ エデュテインメント、2009年)の続き。「下北にアイヌの人々が暮らしていた裏付け」(pp.118-119) 「川内町の山麓に「隠れ里」と呼ばれた集落があって、明治…

「下北でおられていた「厚司」」にたどり着く」

同じく田中忠三郎の『物には心がある。 消えゆく生活道具と作り手の思いに魅せられた人生』(アミューズ エデュテインメント、2009年)より。(pp.108-111) 厚司に出会った田中忠三郎は町の古老たちにアイヌについて訪ね歩いたという。 「かつて川内川の上…

「アイヌ「厚司」に惹かれて」

青森市教育委員会には、多くのアイヌの布資料が所蔵されているという。まだ拝見したことがないが、その多くは旧稽古館という歴史民俗展示館にあったもので、2006年に稽古館が閉館されたため教育委員会に収められているということである。 ここの館長を務めて…

當麻寺―極楽浄土へのあこがれ―

6月2日まで奈良国立博物館で開催中の「當麻寺―極楽浄土へのあこがれ―」展を拝見した。 當麻寺は、奈良の葛城市にあり、本尊綴織當麻曼荼羅と當麻曼荼羅を現出させたとされる中将姫伝説が残るお寺で、糸や布に関わる人や女性の信仰に関わる土地でもある。とい…

アイヌの紋様の継承など

小川早苗『アイヌ民族もんよう集』でアイヌ文様について興味深い記述があった。 アイヌ民族もんよう集―刺しゅうの刺し方・裁ち方の世界作者: 小川早苗出版社/メーカー: かりん舎発売日: 2010/06メディア: 大型本購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ…

アイヌ民族の少女の躾・・・

小川早苗『アイヌ民族もんよう集』に次のような文章が出てくる。千歳地方で語られているユカラの一節だということ。母親の子育て(縫い物のさせ方)らしい。 アイヌ民族もんよう集―刺しゅうの刺し方・裁ち方の世界作者: 小川早苗出版社/メーカー: かりん舎発…

アイヌ工芸―祈りの文様

現在、東京駒場の日本民芸館で開催中の「アイヌ工芸―祈りの文様」展を拝見した。 http://www.mingeikan.or.jp/events/ 柳宗悦は日本民藝館創立から5 年目の1941 年9 月、アイヌ工芸の蒐集・研究家の杉山壽栄男の協力を得て、アイヌ工藝文化展を開催したとさ…

ヴェルディエの「裁縫女」―ピエースとマルケット

(つづき) ミノの学校では少女たちは卒業課題としてピエースとマルケットを作成したという。 ピエースは一枚の布の端から端まで裁縫の主な縫い目を刺したもので、様々な縫製の技法を集積したものだという。たぶん縫い方のサンプラーのようなものだと思う。…

ヴェルディエの「裁縫女」―学校の裁縫教育

(つづき) 牧場での編物と並行して、ミノの学校教育の中で、少女たちは裁縫を習った(というが、こりゃ徹底した手仕事教育だ・・・と私はだんだん嫌な気分になっている)。 19世紀末から20世紀初頭の教育学者たちは「裁縫の授業は、女子教育、あらゆる女子…

ヴェルディエの「裁縫女」―編物と牧場

(・・・つづき) ミノという地域では男女共に学校より牧場へ行くことが、子どもたちにとって重要かつ教育的だったという。大人になっても、ずっとこの土地で生きていく者にとって、学校とは読み・書きを教えてくれれば良い場であって、それ以上の知恵は牧場…

ヴェルディエの「裁縫女」

ちょっとベーシックな女性労働研究。イヴォンヌ・ベルディエ『女のフィジオロジー 洗濯女・裁縫女・料理女』という本がある。フランス、ブルゴーニュ地方のミノという小さな村の人々の様子を描いている。 女のフィジオロジー―洗濯女・裁縫女・料理女 (1985年…

信玄袋

手芸の話から少しそれるかもしれないけれど、『明治文化史』でちょっと気になったのが、「信玄袋」の話題。 明治文化史〈第13巻〉風俗 (1979年)作者: 開国百年記念文化事業会出版社/メーカー: 原書房発売日: 1979/04メディア: ?この商品を含むブログを見る …

娘組

『明治文化史』第13巻を一通りチェックしてしまうつもりが、あちこち関心が飛んでしまって、なかなか最後まで行き着けないので、ここからまとめて・・・。 明治文化史〈第13巻〉風俗 (1979年)作者: 開国百年記念文化事業会出版社/メーカー: 原書房発売日: 19…

「アプリケ芸術」という語り

ちょうど、アップリケ作家・宮脇綾子について調べている中で、過去の図録の中に切畑健が書いた文章があったので取り上げたい。 アプリケ芸術50年?宮脇綾子遺作展 (1997年)作者: 朝日新聞社出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 1997メディア: 大型本この商品…