糸・布・針を読む

自分は縫わないけど、縫ったり織ったりすることを考える・・・読書や調査の記録(基本は自分の勉強メモ)

「女性とデザイン」

1881年、美術理論家のルイス・F・デイは次のように述べている。

「現代の差し迫った問題の一つは、貧しい女性はどのように生計を立てるのかということである。(中略)美術関係の仕事、特に装飾芸術は彼女たちに開かれていると多くの人々は思っている。」

 ノニ・ガドスデン「女性とデザイン」『アートに生きた女たち』図録、2013年、名古屋ボストン美術館

 

ガドスデンのこのテクストはとても面白かったので簡単に要約しておく。

 

装飾芸術の分野は、いわゆる純粋芸術よりかなり早くから多くの女性に雇用や創造的表現、指導力をもたらしたとされる。19世紀半ばまで、刺繍や陶磁器の絵付け、その他に家庭で行われる手仕事などの装飾芸術は「女性の仕事」と結び付けられていた。

多くのデザイナーが必要になると女性のためのデザイン学校も作られた。女性たちの活躍の場を広げていくという目的ではなかったかもしれないが、デザイン改革運動はこうした促進剤の役割も果たしたことになる。

 

デザイン改革運動は、しばしば産業化の進歩やその結果に対する反動であり、労働時間や環境、家族関係や家庭生活、移民、教育などの問題を含んでいた。改革の精神はアメリカ社会のほぼすべての面に影響を及ぼしたとされる。女性はこうした改革運動のリーダーとなり、特に子供や家族、家庭生活、そして女性自身に関する運動でその中心を担ってきた。

デザイン改革運動には、「機械製品の美学」と「消費者の趣味を改善する」という二つの目的があり、どんな社会的地位にある女性も運動に参加する多様な手段を与えられた。女性デザイナーは、美術界での女性の地位が向上し、機会が得られるよう努めた。女性デザイナーはより多くの社会的、経済的自由を手にし、芸術的目的を主張した。

とはいえ、女性デザイナーがどんな工芸や主題、芸術的試みも社会的反響を気にせず望み通り自由に手掛けられたわけではないが、女性画家や彫刻家よりも学校教育や仕事、芸術活動の支援において多くの機会を得たとされる。

 

・・・という感じで、日本のデザイン史ではほとんど無視されているのだが、デザインとジェンダーの問題は実はとても面白い。現在でもデザイン領域は、女性が活躍している巨大市場である。ただし、その内部において性別役割分業が行われていることも確かで、圧倒的にファッションデザインが女性たちの活躍の場になっている。

この領域の秀逸な先行研究はやはりペニー・スパークだろうか。

パステルカラーの罠―ジェンダーのデザイン史 (りぷらりあ選書)

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