糸・布・針を読む

自分は縫わないけど、縫ったり織ったりすることを考える・・・読書や調査の記録(基本は自分の勉強メモ)

衣服の仕立て

秦檍丸の『蝦夷生計図説』には、アイヌの人々の衣服の縫い方が紹介されている。

「縫い方」はアットゥシウカウカというそうだが、アットゥシ=「縫う」で、ウカウカ=「縫うこと」の意味になるらしいので、ひたすら縫うイメージなのか?

 

まず衣服の丈を決めて布を織り、それを2つに切る。

背を上から下に縫う。

肩の左右を二寸五分切る。

木綿かアットゥシを縫いつける。

背に木綿を当てて、刺繍する。

 

というのが、基本的な工程らしい。

蝦夷生計図説

蝦夷生計図説

 

縫い方も当然和人とは異なり、和裁では基本が運針になるが、アイヌの人々の場合「まきざまに縫う」―つまり、かがり縫い―が基本だということ。

これはかつて金属針ではなく骨針を使用していた頃の方法で、和人が使用する和針が針として高機能だったのに対して細かな作業に向いていなかったためらしい。細く丈夫で、鋭利な針があれば薄い布をしなやかに縫えるというのはわかる。確かに2枚の薄い布を運針で縫うということが針の機能性に依存している技法だというのはそのとおり。

技術は単に人の器用さや技法に規定されるのではなく、道具の位置づけも大きいのだと言うことだろう。

ちなみに、アイヌの人々は裁縫に小刀を使ったというが、明治末以降になると和人との交渉の中でハサミを入手し使用するようになったということだ。

なかなか面白い。

アイヌの衣文化 (1979年)

アイヌの衣文化 (1979年)