『乙嫁語り』
森薫の作品はどれも好きで、特に衣服や背景描写に惹かれてしまうのだけど、『乙嫁語り』は、これまたスゴイ・・・と感心している。
- 作者: 森薫
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2009/10/15
- メディア: コミック
- 購入: 58人 クリック: 1,441回
- この商品を含むブログ (424件) を見る
中央ユーラシアの少数民族の女性たちの姿が描かれるが、時代は19世紀だろうか。イギリス人の文化人類学者である主人公の目を通して――とっても文化人類学的だと思う――「婚礼」を中心とする暮らしを描いていく。
何が好きかといえば、とにかく衣服の表現が緻密なところ。
刺繍、文様、装飾品・・・これほど細かく描き込むのは、作家本人がそこに執着していないととても無理だろうと思ってしまう。ただ、そのことは物語の筋にはほとんど関係ない。けれど、私はこの細部の表現があってこそ、物語を堪能できると思っている。
現実にこういう美しい民族衣裳を着ている人と過ごしても、それは1点のモノとしてすごいと思うのだろうけれど、マンガの登場人物の衣服の場合、それを何度も様々な角度から描くわけで、その再現の回数は半端ではない。衣服の装飾性へのこだわりがなければ、こんなに再現されることはないと思う。
装飾への愛・・・というか、おそらく細部への愛なのだろう。