糸・布・針を読む

自分は縫わないけど、縫ったり織ったりすることを考える・・・読書や調査の記録(基本は自分の勉強メモ)

スカラリーメイド

村上リコ『英国メイドの日常』(河出書房新社、2011年)を読んでいて、いくつか縫い物に関する記述があって、なかなか興味深かった。

図説 英国メイドの日常 (ふくろうの本/世界の文化)

図説 英国メイドの日常 (ふくろうの本/世界の文化)

 

メイドにはいくつか種類があったそうで、その中でスカラリーメイドについて書かれた部分。

1920年代初頭に家事使用人として働き始めたマーガレット・パウエルという女性。彼女が働き始める際に、かつて自分もメイドだった母親が次のように言ったという。

「お前は針仕事は嫌いでしょう?だったらキッチンしか行くところはないわね。パーラーメイドになったら、テーブルクロスやナプキンを全部繕うし、ハウスメイドならシーツ。ナースメイドになったら子どもの服を繕って――ひょっとしたら一から縫わなきゃならないこともある。でもキッチンメイドなら、針仕事はしなくてすむわよ」

「それじゃ私、キッチンメイドになる」

(p.40)

 

スカラリーメイドは、キッチンメイドのさらに下で、洗い場にこもって白砂や炭酸ナトリウムや石鹸を使って、鍋や調理器具を一日洗い続けるという。かなり辛そうな仕事だが、それでも針仕事が嫌いな女性にとってはそちらのほうがよかったようだ。

メイドと針仕事…興味深い。