糸・布・針を読む

自分は縫わないけど、縫ったり織ったりすることを考える・・・読書や調査の記録(基本は自分の勉強メモ)

アイヌの紋様の継承など

小川早苗『アイヌ民族もんよう集』でアイヌ文様について興味深い記述があった。

アイヌ民族もんよう集―刺しゅうの刺し方・裁ち方の世界

アイヌ民族もんよう集―刺しゅうの刺し方・裁ち方の世界

アイヌ民族紋様の伝承については、母カタコは、川筋ごとに各家ごとに紋様は違うものだよ、女は母方の紋様を受け継ぐものだよ。従弟同士の紋様の違いは、三石のハポ(お母さん)と当別のハポの紋様が違う。」(p.4)

気になるのは、「川筋ごと」と「各家ごと」は一致しているのだろうか。同じ家系が川筋に暮らしているのなら一致しているし、そうでないなら紋様の系譜には二つの系があるということだし・・・。そのあたり気になる。

 

「母親は、息子の着物もイカラカラしていたと思われますが、夫のチカラカラペは妻が縫ったのでしょうか。私の母は、妻が夫のチカラカラペを縫ったとは語りませんでした。

国立民俗学博物館の佐々木利和氏に伺いました。「これから調べる大切なことだね。」

その後、北海学園大学の藤村先生に同じ質問をしてみました。「妻は夫の儀礼用衣服は当然縫ったと考えます。」夫の母からの紋様を受け継ぎつつ、そのころの流行の紋様を表現したであろう。夫の着物や息子の着物の紋様は心なしか手も込んでいて、サクリやパラオホによるチンヂがわが家には残っています。」

これも面白い部分。

前述部分で母方の紋様を受け継ぐとあったが、そうであるなら女性は息子に縫うことはあっても夫に縫うことはない。もしくは、男性は妻側の紋様を身にまとって生きるということになる。しかし、妻は夫の母から紋様を受け継いだともある。実際にはきっとそんな簡単に系譜が理解できるほどシンプルではないということだろう。

 

「紋様はあずましく座るように置くものだよ、裾から上に這わせるものだよ。」

この「あずましい」の意味がよくわからなかったのだが、北海道弁で「落ち着いて心地よい」ということらしい。なので、まあ落ち着きよく紋様を置くという感じだろうか。面白いのは、「裾から上に這わせる」というところ。もしこれが作り手に継承された普遍的な制作方法なら(私にはその判断はできない)、紋様は裾を埋めるところから始まるということになる。

普通考えたら、布端より中心の方が縫いにくいから、背中から広げていくように思うのだが、どうやら違うということだろうか・・・。

奥が深すぎてよくわからない・・・。