糸・布・針を読む

自分は縫わないけど、縫ったり織ったりすることを考える・・・読書や調査の記録(基本は自分の勉強メモ)

棚機神社

 

裁縫や機織は人が暮らす上で不可欠な労働だったから、当然ながらそうした行為を守る神様というのがいる。そんな機織の神様を祀る、奈良県葛城市にある棚機神社を訪れた。

「この地域は、朝廷に献上する布を織る氏族が暮らす村で、五世紀頃、大陸から来た人がそれまでなかった最新の棚台付きの織り機(棚機タナバタ)と、絹などの高級織物を作る技術と共に「牽牛と織女の七夕の物語」や、中国の乞巧奠と呼ばれる、機織り技術の向上を願う祭りの儀式を、この村に最初に伝えたと言われています。」(棚機神社保存会)

というわけで、歴史的には機織技術が伝わるとともに、こうした技術を守り伝えていくためのディスクールが一緒に入ってきたということになるだろうか。とても面白いと思う。

ある種の技術が新しく根付くためには、それを保護・育成するための言説が不可欠なのだろう。女性に裁縫をさせるために、いかに裁縫が大切で、それができると「女らしい」と高評価を得るかということを延々説いてきた歴史はまさにそれだろう。繊維労働がどれほど人間の生活に大切だったかということの証でもある。

ちなみに、この神社、現在は「タナバタさん」と呼ばれる石の祠が置かれ、織物の神様である天棚機姫神(アメノタナバタヒメノカミ)が祀られている。

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