刺繍の技法
先日、北海道立近代美術館で「アイヌ・アート―風のかたりべ」展を拝見した。食い入るように刺繍を見てきたのだが、単眼鏡を忘れたためさすがに針目まで見るのは難しかった・・・自業自得。
さて、以前から気になっていたのだが、アイヌ刺繍はどうやら基本はチェーンステッチ(のようなもの)のように感じられるが、時折面を埋めるような複雑なステッチや太い糸を用いたものが見られたりする。
杉山寿栄男の『アイヌ文様』の解説部分に少しだけ刺繍の技法について触れていたので抜粋しておこうと思う。
「文様即ち刺繍の総名イカラカラは本来は物を「造る」また「物す」るという意の語である。その内、太い糸を引きのべて、それへ細い糸を絡んで縄のように縫って行くイカラリ、細い糸を、鎖の環々相連なるさまに、小さな輪を以て続いて延びて行くように縫うオホ、又その他、返し針という縫い方もある。」(p.10 本当は旧字旧仮名)
この部分だけでもいくつかわかることがある。
まず、「文様」=「刺繍」=イカラカラ=「造る」という言葉のつながりがあるということ。
「縄のように縫って行くイカラリ」は、文章だけでははっきりわからないけれど、たぶん金駒刺繍のような技法で、太い糸を縫い綴じながら立体的な輪郭線を作り出している部分なのだと思う。
また「鎖の環々相連なるさま=オホ」というのは、いわゆるチェーンステッチに似た縫い方だと想像できる。
いろいろ疑問が解けて面白いのだが、やはりあの網目のようなステッチのことは書いていないので、また別の文献を調べてみなければ・・・と思っている。
- 作者: 杉山寿栄男
- 出版社/メーカー: 北海道出版企画センター
- 発売日: 1974
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